オフィスの消費電力を削減する際、照明・空調に次ぐターゲットとなるのが「OA機器(約21%)」です。 (1)機種選定: 1週間の標準消費電力量を示す「TEC値」が低いモデルを選ぶ。 (2)機器の集約: 分散したプリンターやFAXを1台の高性能複合機に統合し、待機電力を一本化する。 (3)運用ハック: まとめて出力、集約印刷(N-up)、個人認証によるミスプリント抑制の徹底。 これらを組み合わせることで、環境負荷を低減しながら、目に見える形でのコスト削減が可能となります。
省エネアクション早見表:何をすれば、どれくらい電気代が下がるか
結論を先に示すと、複合機の電気代削減は「機器選定・物理対策・運用ルール」の3カテゴリ・6アクションに整理できます。下の表は、それぞれの対策の効果と実施タイミングを一覧化したもの。自社で取り組む順番を決めるチェックリストとして使えます。スペック面の詳細は記事中盤のメーカー別比較表(H2-2)を参照してください。
| 対策 | カテゴリ | 期待される効果 | 実施タイミング |
|---|---|---|---|
| TEC値の低い機種を選ぶ | 機器選定 | 年間消費電力を30〜50%削減可能 | 機種更新・リプレース時 |
| バラバラのプリンター・FAXを複合機に集約 | 機器選定 | 複数台の待機電力を1台分に圧縮 | 機種更新・オフィス再構成時 |
| 業務終了時に主電源オフ、長期不在時はコンセント抜く | 物理対策 | 待機電力(1日約3.3kWh分)を完全カット | 即日実施可能 |
| 省エネモード(スリープ)を短時間設定にする | 物理対策 | 待機状態の消費電力を最小化 | 即日設定可能 |
| 個人認証でミスプリント・私的印刷を抑制 | 運用ルール | 紙・トナー・電気代を合計で年間数百万円削減も | 1ヶ月程度の準備 |
| まとめ出力・集約印刷(N-up)の徹底 | 運用ルール | 出力時間と用紙コストを1/2〜1/4に | 即日〜1週間で社内周知 |
1. OA機器の節電を通じた省エネとは
オフィスビルの電力消費は「照明33%・空調28%・OA機器21%」で約8割を占め、OA機器の中でも複合機は特に消費電力が大きく、節電効果も大きい領域です。経済産業省の調査報告によれば、オフィスビルで効果的に節電を行うには、電力消費の約8割を占めている、照明(33%)、空調(28%)、OA機器(パソコン、コピー機等:21%)の3つの対策が重要であると指摘されています。
この内、消費電力の2割以上も占めているOA機器は、PC、プリンター、複合機等、それぞれの分野で対策が必要です。特にコピー、プリント、スキャン、FAXといった機能が一体となった「複合機」は、オフィスにおける消費電力が特に高いことが分かっています。これらをこまめに省エネ対策をすることで、地球環境への配慮だけでなく、コスト削減という経営的なメリットも非常に大きくなるでしょう。
2. 複合機の消費電力の種類
複合機の消費電力は「最大電力(1,100W〜1,500W)」「動作時平均電力(400W〜600W)」「待機時電力(100W〜150W)」「スリープモード(1.5W〜3W)」の4段階で、削減対策は最大電力と動作時平均電力の2点に集中させるのが効果的です。複合機は現在のオフィスには欠かせない事務機器であり、リース料金などの維持費用はもちろん、電気料金もランニングコストとして継続的に発生します。複合機の消費電力は、主に以下の「最大電力」「動作時平均電力」「待機時電力」に分類されます。消費電力を削減するためには、待機状態から復帰した際の「最大電力」と、印刷中の「動作時平均電力」の両面に対策を施す必要があります。
●最大電力
最大電力とは、複合機の電源を入れたときや、待機(スリープ)状態からコピーや印刷を開始するために復帰したときの電力を指します。この、ヒーターを加熱する瞬間が最も電力を消費するため「最大電力」と呼ばれます。
●動作時平均電力
名前の通り、複合機でコピーや印刷を継続して行っている最中の消費電力を指し、動作中の平均値で表されます。
●待機時電力
複合機を使っていないときのスリープモードやスタンバイ状態で消費している電力です。最も消費電力が少ない状態ですが、最近の機種では、待機時のエネルギー消費効率が年間で103kWh(電気代にして約2,200円程度)と言われていますが、新しい機種ほどこの数値はさらに少なくなります。
実際にそれぞれの状態でどれくらい電力を消費しているのかは機種によって異なりますが、平均的な数値は以下の通りです。
- ・最大電力:1,100W〜1,500W
- ・稼働時平均電力:400W〜600W
- ・待機時電力:100W〜150W
- ・スリープモード:1.5W〜3W
このような数値はメーカーのホームページの専用ページに必ず記載されていますので、ぜひ確認してみてください。
【参考:主要メーカー別・消費電力スペック比較】
| メーカー | シャープ | キヤノン | リコー | 富士ゼロックス |
|---|---|---|---|---|
| 代表機種例 | MX-5150FV | iR-ADV C5550F III | IM C4500 | DocuCentre-VII C4473 |
| 連続複写速度 | 51枚/分 | 50枚/分 | 45枚/分 | 45枚/分 |
| 最大消費電力 | 1.45kW以下 | 1.5kW以下 | 1.5kW以下 | 1.5kW以下 |
| エネルギー消費効率 | 173kWh/年 | 130kWh/年 | 81kWh/年 | 100kWh/年 |
| ウォームアップタイム | カラー27秒/黒15秒 | 10秒以下(高速時) | 21秒 | 36秒以下 |
| TEC値 | 3.3kWh | 2.4kWh | 1.5kWh | (記載なし) |
| エネルギースター | 適合 | 適合 | 適合 | 適合 |
※当社調べ。区分:複合機b。詳細な条件は各メーカーカタログをご参照ください。
■エネルギー消費効率
省エネ法(平成25年3月1日付)に基づいた測定による数値です。1年間に消費する電力量を示しており、この数値が小さいほど省エネ性が高いことを意味します。
■TEC値
「Typical Electricity Consumption」の略。国際エネルギースタープログラムの適合基準で、「概念的な1週間(稼働5日+スリープ/オフ2日)」の消費電力量(Wh)を指します。この値が低いほど省エネ性能が優れています。
■国際エネルギースタープログラム
オフィス機器の国際的な省エネルギー制度です。省エネ性能の優れた上位25%の製品のみが適合となるよう基準が設定されており、ロゴマークの使用が認められます。
3. 複合機の省エネ対策
機器の集約、節電モードの最適化、主電源管理、ミスプリント抑制、まとめ出力、集約印刷の6つを組み合わせることで、複合機の電気代と環境負荷を同時に削減できます。
●機器の集約化(セントラライズ)
多くの電力を必要とする複合機ですが、他の機器をバラバラに使用するよりも、実は集約したほうが電力は少なくて済みます。カラープリンター、モノクロプリンター、FAX、コピー機と、別々の機器が何台も繋がっていませんか?これらが個別に待機電力を消費している状況は、非常に大きな無駄です。これらを1台の高性能な複合機に統合することで、高い省エネ効果が得られます。
また、オフィスレイアウトの見直しも重要です。設置場所を最適化し、ほとんど使われていない稼働率の低い機器を削減することで、無駄な電力消費を根底から見直すことができます。
●節電(省エネ)モードをうまく使う
夜間に使用しなくても、FAX受信のために電源を「入」にしている事業所は多いはずです。一昔前の機械だと待機電力だけで年間約8,800円(404kWh/8kW)かかっていましたが、最近の機械は約2,200円(103kWh/1.98kWh)程度まで進化しています。新しい機械ほど電気代は抑えられる仕様になっていますので、古い機種を使い続けるよりも最新機種への更新が結果としてコスト削減になる場合があります。
●主電源をオフ、コンセントを抜き待機電力をカット
業務終了時など、しばらく使わない時には必ず本体の主電源をオフにしましょう。さらに長期間使わない場合はコンセントからプラグを抜くことで待機電力を完全にカットできます。1日あたりの待機電力量は約3.3kWhにもなり、年間で見れば非常に大きな節約効果を生みます。
●ミスプリント、無駄プリントを減らす
個人認証機能を活用し、利用状況を「見える化」することで、社員の無駄な印刷を抑制できます。ある100人規模の企業A社での試算では、無駄な印刷を排除するだけで、紙・トナー・電気代を合わせて年間900万円ものコスト削減が見込めるとの結果も出ています。ミスプリントの削減は単なる節約以上の価値があります。
●まとめて出力する
複合機は、スリープからの復帰時に最も電力を消費します。そのため、1枚ずつ何度も印刷するより、留置印刷機能やFAXのデータ蓄積機能を活用して一度にまとめて出力するほうが効率的です。また、電子化してPC上で閲覧するだけで済ませ、印刷そのものをしない選択も重要です。新しく導入を検討されるなら、高速で出力できる機器を選ぶことも節電に寄与します。
●集約印刷を行う
1枚の用紙に複数ページを印刷する「集約印刷(2in1、4in1等)」を活用しましょう。複合機の消費電力は出力時間に比例するため、ページをまとめれば出力時間を1/2、1/4と短縮でき、消費電力を大幅に削減できます。社内資料などは徹底して集約印刷を行うルール作りが効果的です。
複合機の省エネに関するよくある質問(FAQ)
Q1. TEC値とエネルギー消費効率はどちらを見るのが正解ですか?
用途で使い分けます。TEC値(国際エネルギースター基準)は「概念的な1週間の消費電力」で、海外も含めた製品横断比較に向いています。エネルギー消費効率(省エネ法基準)は「年間消費電力」で、日本国内の省エネ法に基づいた数値です。日常の機種選定では、TEC値が低いほど海外でも認められた省エネ性能の証なので、まずTEC値を見て、補完的にエネルギー消費効率を確認するのがおすすめです。両方の値が低ければ間違いなく省エネ優秀機です。
Q2. 「国際エネルギースタープログラム適合」とはどういう意味ですか?選定基準としてどれくらい重要?
米国環境保護庁(EPA)が制定した国際的な省エネ認証で、業界の上位25%の省エネ性能を満たした製品のみがロゴ表示を認められます。主要メーカーの業務用複合機はほぼ全てが適合しているため、「適合か否か」より「適合の中でTEC値がどれだけ低いか」を比較するのが現実的です。RFP(調達仕様書)に「エネルギースター適合製品に限る」と入れる企業も増えており、官公庁・上場企業の調達では事実上の必須条件となっています。
Q3. 古い複合機を使い続けると、新機種に比べて電気代はどれくらい違いますか?
記事本文の例で比較すると、10年前の複合機の待機電力は約404kWh/年(電気代約8,800円)、最新機種は約103kWh/年(約2,200円)で、待機分だけで年間6,000円の差。動作時電力も加味すると年間1〜2万円の差が出ます。さらに、古い機種は故障頻度・修理費・トナー消費量も増えるため、「電気代だけ」では測れない総コスト差が拡大します。リース満了時期に省エネ機種への切り替えは、ESG面でも経営面でも合理的な判断です。
Q4. 毎日業務終了時に主電源をオフにすると、本当に節電になりますか?機械への負担は?
節電効果は確実にあります。1日あたり約3.3kWhの待機電力カットで、年間約1万円程度の節約。一方で、(1)毎日のオン/オフは複合機内部のヒーターやセンサーの起動負担が増えやすい、(2)朝の最大電力消費(ウォームアップ時)が頻繁に発生する、というデメリットも。現実的な落としどころは「土日祝・連休は主電源オフ、平日夜間はスリープモードのまま」です。FAX受信が必要なら平日夜間は電源オンが基本ですが、それでも最新機種ならスリープモードで十分省エネです。
Q5. 省エネモード(スリープ)の設定時間は短くするほど良いですか?デメリットは?
利用頻度とのバランスが重要です。短く設定(例:1分でスリープ)すると待機電力は最小化しますが、印刷指示のたびにウォームアップ時間が必要になり、業務効率が落ちる場合があります。逆に長く設定(例:30分)すると待機電力は増えるが、すぐ印刷できる。最適解は「平均的な印刷間隔よりやや長めに設定」で、多くのオフィスでは10〜15分が運用ストレスと省エネのバランス点です。最新機種は復帰時間が10秒以下のものもあり、短時間スリープでもストレスなく使えるようになっています。
Q6. 集約印刷(2in1・4in1)を社内ルール化する際の、現実的な運用ポイントは?
3つの工夫がカギです。(1)用途別ルール:社内会議資料は2in1、メモ用や参考資料は4in1、対外資料は通常印刷、と段階を分ける。(2)プリンタードライバーの初期設定変更:全PCのデフォルトを「2in1・両面」に変更しておけば、何もしなくても自動的に集約される。(3)例外運用の認識合わせ:契約書や図面、写真資料などは集約NGの例外を明確に。「全部集約」ではなく「業務適切な集約」のルール化が、定着への近道です。

